総評
審査委員長 一般社団法人 日本特許情報機構
デザイン部長 本多 誠一
第41回「プラスチック日用品優秀製品コンクール」が開催された。
一昨年から引き続く新型コロナウイルス感染症第7波が全国に拡大するとともに、本年2月のロシアのウクライナ侵攻による産業・経済への影響が出始めた最中の厳しい状況にもかかわらず、昨年同等の20社、57点の様々な製品の応募があった。
今回のコンクールにおいても、以下紹介する各賞受賞製品をはじめ出品製品の多くが例年に劣らず、機能的で洗練された造形、生活を豊かに充実させ、暮らしを楽しくさせる創意工夫に溢れるだけでなく、本年は特に、環境への配慮、SDGsへの対応などにより一層積極的に取り組んだ製品が多数見受けられた。
今回、特別大賞の「経済産業大臣賞」には、リス(株)の「リスOBPダストボックス45J」が選定された。本製品は、国内で初めてオーシャンバウンド・プラスチック(OBP※)を配合した環境に優しい製品であるとともに、大きなハンドル付きのフタで開閉がしやすい大きな開口部の構成、また必要量に応じて左右に連結増設することができる点など、環境への配慮と優れた機能性、利便性を共に兼ね備えた点が高く評価され選ばれた。
(※Ocean Bound Plastic:海に流出する可能性が高く海洋汚染のおそれがあるプラスチックごみのこと。具体的には海岸から50km以内の陸地に捨てられているプラスチックのごみを指す。例えば、ポイ捨てされたペットボトル・キャップ、不法投棄されたプラスチック製品など。)
そして、大賞の「経済産業省製造産業局長賞」には 、国際化工(株)の「メリーナ M732コーナー水切りトレー」が選定された。本製品は、狭いシンク周りを有効に活用できる三角形のコーナー水切りトレーで、波型リブと傾斜で乾燥が早く、かつ滑り止め付き小脚で安定し通気性もよく衛生的であり、また不使用時や場所を取らない自立形状とするなど細かな配慮が行き届いた機能性・利便性に優れた製品であるだけでなく、グレー色のものは不良品や成形時の端材を60%再利用したリサイクル素材を使用し環境への配慮にも積極的に取り組んでいる点が高い評価を得たものである。
そのほか各協賛団体の理事長賞又は会長賞として、「(一財)生活用品振興センター 理事長賞」には、(株)伊勢藤の「食パンスライサーHC」が、昨今の高級食パンブームから家庭でも1斤の食パンを自分好みの厚さに簡単にスライスしたいというニーズに対応する実用性、利便性に優れた製品であるとして、「(一財)日本ファッション協会 理事長賞」には、シンコハンガー(株)の「ライスレジンハンガー15シリーズ」が、その素材にお米(非食用のもの)を15%使用した半透明琥珀色の柔らかな色合いの人と環境に優しい生物由来の有機性資源使用のバイオマス適合製品であるとして高く評価され、選定された。
また、「(一社)日本流行色協会 理事長賞」には、天馬(株)の「LILICY(リリシー)ボトルキュート180㎖ ローズ/ネモフィラ/ジャスミン」が選定された。本製品は、極薄の紗をかけたような半透明の隅丸角柱形状が覆う内側の爽やかな色を浮き立たせる演出(デザイン)が魅力的な飲用ボトルであり、この愛着を感じさせる造形美は使い捨てでない、地球への優しさを実現する一つの方法として評価を得たものである。
そして、「全日本プラスチック製品工業連合会 会長賞」には、(株)台和の「漁網由来のトレー」が選定された。漁業から発生するごみ:漁網やロープ等のごみは海洋プラスチックごみ全体の相当量を占めるといわれており、そうした状況の中にあって漁網の再利用に積極的に取り組んだ本製品は環境への配慮の観点で高い評価を得て選定された。
次に、各協賛団体の奨励賞として、「(一財)生活用品振興センター 奨励賞」には、スケーター(株)の「PBTC1バター外し機能付バターカッター」が、目盛り付きガイドとスライダーで適量にカットしたバーターを手を汚さずそのまま塗れ、またカッター部分がテーブルに接しない衛生的な構造であるなど、実用性、利便性が備わったものと評価され、「(一財)日本ファッション協会 奨励賞」には、リス(株)の「HOME&HOMEどこでも使えるペダルダストボックス13L」が、蓋の組み換えで設置場所を選ばないペダル式左右開閉機構を有する機能性とシンプル&スマートなデザインで高く評価され、選定された。
また、「(一社)日本流行色協会 奨励賞」には、国際化工(株)の「アルテシリーズ①プレートE291・E293 ②飯碗A121・A122・A123 ③ボールG116・G117」(飲食用食器)が、表面にレリーフや自然で細かな凹凸を施し、マットな質感とすることでぬくもりのある手触りの表情豊かな器に仕上げるとともに、不良品や成形時の端材25%を再利用したリサイクル素材を使った環境に優しい製品である点で評価され、「全日本プラスチック製品工業連合会 奨励賞」には、岩崎工業(株)の「タテヨコ・シームレスピッチャー 1.6L・2.1L・3.0L」が、フタとパッキンのシームレス化(一体成型)・広口の洗いやすい構造に加え、気密性が高く横向きでも収納できるなど使い勝手が良く、熱いお茶を直接入れられる耐熱性も備えた実用的で便利な製品であると評価され、選定された。
そのほか、日本プラスチック日用品工業組合優秀賞として、(株)吉川国工業所の「①STC-01Sスタックアップコンテナー53(インナーボックスセット)②STC-02Sスタックアップコンテナー83(インナーボックスセット)③シリコンパッドΦ21」が、コンテナー全体を直線的な山型の畝状が連続するジグザグ面から成る構造体として耐久性と大容量を両立させた機能的なデザインとして高い評価を得て、また、東和産業(株)の「①LTR小物干しハンガー24P ②LTRジャンボ角ハンガー42P ③LTRパラソルハンガー キャッチ式」が、コロナ禍で増えたおうち時間において室内景観を和ませる淡い乳白色系ブラウン・ブルー・ライトグレーの癒しの色合いを採用したおしゃれな物干し具として評価され、選定された。
以上、特別大賞として経済産業大臣賞1点、大賞として経済産業省製造産業局長賞1点、及び協賛団体の理事長賞又は会長賞が各1点ずつ計4点、協賛団体の奨励賞が各1点ずつ計4点、並びに優秀賞2点の、総計12点の優秀製品が選定された。
本年度の受賞製品は、冒頭でも述べたとおり、機能・性能、実用性、利便性に優れ、あるいはCovid-19後の新たな生活様式に対応するだけでなく、特に環境への負荷を低減する取り組みを積極的に行っている製品が多かった。
こうした環境に配慮した製品が近年多く生み出されるようになってきたが、本年2022年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(令和3年6月11日公布)によっていよいよ本格化することになった。この法律は、持続可能な社会の実現に向け、社会で使われるプラスチック資源の循環を促して環境に配慮した経済活動の流れを整えるためのものであり、プラスチック使用製品の設計からプラスチック使用製品廃棄物の処理まで、プラスチックのライフサイクルに関わるあらゆる主体におけるプラスチックの資源循環の取組を促進するための措置が盛り込まれている。
プラスチック使用製品を設計・製造する事業者には、国の指針に基づく設計・製造段階でのプラスチック使用量削減の取り組み、また小売り・サービス提供事業者にはワンウェイ(使い捨て)プラスチックの使用合理化の取り組み等がそれぞれ求められ、プラスチック資源循環への一層の取り組みを促している。プラスチック日用品業界にとってはきわめて厳しい試練の時であり、今後もさらに多くの変革が求められることになる。
しかし、それは、世界規模の喫緊の社会課題に対応できる日本のモノづくりの底力を示すチャンスともなり得る。環境に優しい素材への転換など脱プラスチック化とともに、使い捨てではない、他の素材にないプラスチックの特性を活かした優良な製品もまだまだ必要とされる。本年の受賞製品をはじめとする応募製品には既に様々な工夫と努力が表れている。混沌とする政治情勢や厳しい経済状況を乗り越え、世界共通の社会的課題の解決に取り組み、顧客が満足するより良い製品を開発し続けようとする粘り強い企業のマインドの萌芽がうかがえる。
今後も、歴史あるこのコンクールが、プラスチック日用品業界のそうした積極的な取り組みを後押しするものとなることを目指していきたいと思う。













