総評
審査委員長 一般社団法人 日本デザイン保護協会
専務理事 本多 誠一
今年も恒例の「プラスチック日用品優秀製品コンクール」が開催された。第39回の今年は新型コロナウイルスとの闘いの最中となった。しかし、そうした厳しい状況にもかかわらず、昨年より若干減少したものの、一昨年と同じ22社67点の様々なアイテムの製品の応募があった。
今回も、機能的で洗練された造形の優秀な製品が多数見受けられた。生活を豊かに充実させ、暮らしを楽しくさせるアイディアと工夫に溢れる製品であり、応募企業・メーカーの製品開発・デザイン開発に対する強い意識が感じられた。「プラスチック日用品優秀製品コンクール」にふさわしい、日本のものづくりのレベルの高さを見ることができるコンクールである。
今回、特別大賞の「経済産業大臣賞」には、(株)吉川国工業所の「バイオマスバスケット」が選定された。このシリーズ製品は、サトウキビを原材料として作ったバイオマスプラスチックを使用したしたもので、持ち運びやすく、やわらかい素材のラウンドバスケット、タウンバスケットミニ・ビッグには90%、積み重ねて使用するため強度を維持する必要があるスタッキングランドリーバスケット(M・L)には30%を使用し、使用用途に合わせてその配合量を変えて使用者の使いやすい機能・性能を実現する技術的・デザイン的な工夫もなされた環境に配慮した優秀な製品であり、脱石油、持続可能な社会の実現に取り組む企業の姿勢ととともに審査委員から高い評価を受け選定された。
そして、大賞の「経済産業省製造産業局長賞」には 、国際化工(株)の「ラミネトレー」が選定された。この製品は、50%以上を占める紙を樹脂で補強することで、耐水性、耐熱性に優れた、かつ幅広なリムで持ち運びやすく、またシックな木目調の様々な場面で使用できるものとなっており、技術力、デザイン、品質、機能の面において優秀な製品と認められ、持続可能な資源である紙を使用した環境に配慮した製品づくりを進める企業の取り組みとともに、審査員から高い評価を受けた。
そのほか各協賛団体の理事長賞又は会長賞として、「(一財)生活用品振興センター 理事長賞」には、スケーター(株)の「紙パック・パウチゼリー飲料オープナーシリーズ」が、お年寄りや女性・子供など手指の力の弱い者でも容器の開封や開栓を容易にできる利便性の高い補助具としてコンパクトにまとめ上げた点で高い評価を得て選定され、「(一財)日本ファッション協会 理事長賞」には、リス(株)の「トランクカーゴ」(TC-20S/TC-50S)が、軽量かつ頑丈な(耐荷重100kg)な構造、大小のスタッキング構成、ベルトガイドや手持ちバックル等の工夫など利用者の快適性・利便性を追求した製品であり、屋外のみならず屋内での使用にもマッチする落ち着いた色合いに仕上げた点が高く評価され選ばれた。
また、「(一社)日本流行色協会 理事長賞」には、天馬(株)の「ハコットL(ラムネブルー)」が選定された。デザインのコンセプト「レトロかわいい」を、道具箱のベーシックな横長タイプ形状にプラスチック素材を活かした角に丸みをつけ、その柔らかく軽快な印象に合わせたやや淡いカラーリングとマットな質感で上手に表している点が高く評価されて選定され、
「全日本プラスチック製品工業連合会 会長賞」には、信濃化学工業(株)の「スイートマグ」が、陶磁器のような質感と適度な量感、プラスチックの特性を生かした落ち着いた色合いの2色の組み合わせによるデザイン、内側に計量目盛りを施した細かな工夫等を総合して評価され選ばれた。
また、各協賛団体の奨励賞として、 「(一財)生活用品振興センター 奨励賞」には、錦化成(株)の「スリムティッシュボトル(Shutto-シュット-)」が、箱ティッシュの中身をそのまま詰めて使える、縦置きで狭い場所にも置ける利便性、実用性を備え、正にネーミングどおりの「スタイリッシュ」な造形に上手に仕上げている点で、「(一財)日本ファッション協会 奨励賞」には、(株)吉川国工業所の「調理ができる保存容器」が、耐熱・耐冷性、撥水性に優れた樹脂を使用して食品の色移りやにおいなどを解消し、積み重ね収納、まとめて取り出せるトレーなどの工夫で収納・使用時の使いやすさに配慮するとともに、透明感の高い淡い色調のガラスのような外観で、そのまま食卓でも使用できる高級感のあるデザインに仕上げているところが、生活者の日常を豊かに彩るものとして評価され選定された。
また、「(一社)日本流行色協会 奨励賞」には、オカ(株)の「プリスベイスウィルディスペンサー リキッドタイプ」が、詰め替えや内部洗浄・乾燥のしやすい広口ボトルに押しやすい大型ポンプヘッドの使い勝手の良い安定感のある構造、長期使用に耐える上質なつくりの実用性に加え、その彩色を清潔感を象徴する上質なホワイトや「サスティナビリティ」を象徴するグリーンなどバリエーション展開して、生活に映える美しい製品にまとめ上げている点で、「全日本プラスチック製品工業連合会 奨励賞」には、(株)台和の「さじかげんL」(調味料ボトル)が、プラスチックの容器を所定箇所を握りワンプッシュすることで内容の調味料等を所望量吐出可能とする実用的な計量機能を有する構造とした点が優れているとして選定された。
そのほか、「優秀賞」として、岩崎工業(株)の「竹の屑入れ L-745」が、放置竹材の社会問題を解決するため、オリジナルのバイオマス原料を使用した内外色の異なる成形で、量産品でありながら一つ一つ異なる竹の肌触りを活かした一品物として仕上げている点が評価され、また、(株)オーエスケーの「BUDDY ランチシリーズ」が、プラスチックの発色を活かしたカラフルなふっくらと盛れる蓋とグレーの共通の容器体で構成された点が、アメリカンレトロな文房具風の見た目の楽しさと実用性で評価され、選定された。
以上、特別大賞として経済産業大臣賞1点、大賞として経済産業省製造産業局長賞1点、及び協賛団体の理事長賞又は会長賞が各1点ずつ計4点、協賛団体の奨励賞が各1点ずつ計4点、並びに優秀賞2点の、総計12点の優秀製品が選定された。受賞製品は、いずれも従来に比べて利便性の向上や生活を豊かにするものであるとともに、特に時代の要請する地球環境への配慮等に対応する製品として完成度が高いものであった。
冒頭でも述べたとおり、今、全世界は新型コロナウイルス(COVID19)への対応という新たな大きな課題に直面している。約100年前のスペイン風邪(インフルエンザ)のパンデミック等これまで何度か同様の経験しているものの、今回のウイルス禍は現代社会にとっては未曽有の脅威をもたらしている。人類への強烈な顔面パンチのように脳震盪を引き起こし、世界の頭脳はパニックに陥っている。そして終息の兆しも見えない中、暗中模索で新たな社会、産業、経済、生活を再構築しなければならない状況にある。
また一方で、スウェーデンの少女によって逼迫した状況がクローズアップされた「地球温暖化」の阻止、すなわち資源やエネルギー等様々な要因が絡む環境問題も、自ら生み出したブーメランのような禍であり、人類へのボディブロー、成人病となって退っ引きならない状況であり、既に喫緊の解決すべき人類共通の課題となっている。
こうした中、企業活動においても、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みについて社会が一層厳しく見るようになっており、目前の新型コロナウイルス対策及び新たな社会・生活様式への対応を図ることに加えて、人類共通の課題である環境問題等にこれまで以上に積極的に取り組んでいくことが不可欠となっている。
プラスチック日用品業界においても、一層厳しくなる国際競争を勝ち抜くために、コスト競争はもちろんのこと、新たな素材・製品開発等を行うこと等に加え、一層大きな変化を続ける社会的課題にも応えていく必要がある。例えば、環境負荷の低い素材への転換、再利用や回収可能なものにする方向性が既に示されている一方、新たに加わった新型コロナ対策のための衛生面での対応など、取り組むべき課題が多岐に亘り、かつ複雑多面的で相互に関係し合う場合も多いことから、改めて企業スタンスや事業方針等を長期的な視点で見直すことも必要となってくるかもしれない。
いずれにしても、社会的ニーズに応え、消費者の求める、消費者に選ばれる魅力的な製品を生み出す不断の努力を続けなければならないことに変わりはない。使い捨てではない優良なプラスチック製品はまだまだ必要とされる。コロナ禍を乗り越えるため、乗り越えた新たな社会・生活において求められる製品をプラスチックの特性を活かして生み出す可能性と期待も大きい。
本年の入賞製品をはじめとする応募製品には、社会のニーズに応えるべく、様々な工夫と努力によって現在の厳しい状況を乗り越え、顧客満足度の高い製品を開発し続けようとする真摯な企業姿勢がうかがえた。
今後も、この歴史あるコンクールが、プラスチック日用品業界のその前向きな姿勢をさらに後押する一助となるようにしていければと思う。













