総評
審査委員長 一般財団法人 日本特許情報機構
デザイン部長 本多 誠一
今年も世界の政治・経済はきわめて厳しい状況にある。
3年を超え未だ終りの見えないロシアのウクライナ侵攻等の国際紛争に加えて、2025年1月から動き出した第2次トランプ政権の関税攻勢によって世界中は混乱し、我が国も大きく揺さぶられている。
国内では、酷暑、異常気象と災害、そして諸物価高騰で市民生活は疲弊している。昨夏からの「令和のコメ騒動」は俄かな備蓄米放出では収拾せず今秋の新米も高値のままであり、その他調味料、加工品、酒類等の3,000品目を超える食品がまた10月に値上げ、紙製品・プラスチック製品等の日用品や電気代なども値上がりし、一般庶民の生活はますます追い込まれている。
これらの値上げは、原材料費や人件費、物流費、エネルギー価格の高騰や円安が主な原因であり、これら様々なものの価格高騰、行き過ぎた為替変動によって企業の経営環境は一層厳しさを増している。
そうした厳しい状況の中、10月8日、第44回「プラスチック日用品優秀製品コンクール」審査会が開催された。本年の応募は21社、61点、僅かではあるが昨年を上回った。
本年も、各賞受賞製品をはじめコンクール出品製品の多くが生活を豊かにし、暮らしを楽しくさせる創意工夫にあふれるものであり、また、環境への配慮、SDGsへの対応などに積極的に取り組んでいる製品であった。
以下、本年のコンクール各賞受賞製品をご紹介する。
今回、特別大賞の「経済産業大臣賞」には、リス(株)の「WORK&WORK/OBPペール防臭 45JS・70JS・キャスター付90C2」が選定された。
本製品は、オーシャン・バウンド・プラスチック(OBP※)を30%配合した環境に優しい製品であるとともに、大きなハンドル付きのフタで開閉がしやすい大きな開口部の構成など、環境への配慮と優れた機能性、利便性を共に兼ね備えた点が高く評価され選ばれた。
(※Ocean Bound Plastic:海に流出して海洋汚染のおそれがあるプラスチックごみのこと。具体的には海岸から50km以内の陸地に捨てられている、例えば、ポイ捨てされたペットボトル・キャップ、不法投棄されたプラスチック製品など。)
そして、大賞の「経済産業省製造産業局長賞」には 、(株)カワキタの「ShoePit(シューピット)」が選定された。本製品は、市販のひも靴の紐通し孔(シューホール)に簡単に装着できる面ファスナーの締め具で、妊婦やシニア、手足に障害がある方々などでも靴の脱ぎ履きが容易になる便利な製品である点が高く評価されたものである。
そのほか各協賛団体の理事長賞又は会長賞として、
「(一財)生活用品振興センター 理事長賞」には、天馬(株)の「積み重ねても受け取れる宅配ボックス」が選ばれた。軽量でサビの心配がないプラスチックの特性を活かしつつ、最大3段まで積み重ねて複数の荷物に対応でき、また鍵やワイヤー等の防犯対策、書類や小型荷物用のポスト投函口を設けるなど実用性・利便性の観点から今後も需要が増加すると見込まれる宅配ボックス市場において優れた製品であるとの評価を得た。
「(一財)日本ファッション協会 理事長賞」には、(株)吉川国工業所の「蒸気であたためる冷凍ごはん容器」が、二重構造による自然な蒸気循環の造り、穏やかなカラー展開とマットな質感や丸みのあるフォルムが上品で洗練された印象を与え、キッチンに静かに溶け込む道具として仕上げられている点で高く評価され、選定された。
また、「(一社)日本流行色協会 理事長賞」には、錦化成(株)の「ウェットティッシュケース」が選定された。本製品は、抽出後のコーヒー豆を再利用して環境への配慮をしたものであるとともに、部屋には欠かせないティッシュケースの存在を空間にうまく調和させるように陶器のような独特の質感と適度な色の強さを持たせながらも程よく抑えた色調、コーヒー豆を思わせる柔らかな丸みのある造形とが相まって高く評価された。
そして、「全日本プラスチック製品工業連合会 会長賞」には、(株)吉川国工業所の「再生プラスチックを使ったハーフティッシュケース」が選定された。本製品は、再生プラスチックを40%以上使った環境に優しい製品であるとともに、ハーフサイズティッシュがセットでき、またキッチンやベッドサイドなどでの利用シーンではスマホ立てにも使える実用性も高い評価を得て選定された。
次に、奨励賞として、「(一財)生活用品振興センター 奨励賞」には、山崎産業(株)の「コンドル サラアンドカラ バスマットホシボードECO S、同ECO M」が、風呂上がりの使用後にバスマットを簡単に干せ、またコンパクトに収納できる中折れ構造とし、またボードの凹凸面と通気口で十分な通気性を確保できる等、実用性に優れた便利な製品にまとめ上げている点で高く評価され選定された。
「(一財)日本ファッション協会 奨励賞」には、東和産業(株)の「ラクMAXアルミ角ハンガー長ピンチ24P、同32P、同40P」が選定された。
本製品は、つかむ向きを選ばない360°回転機構、楽に摘めて作業しやすい交互配色の長ピンチ、掛けるだけで竿をつかむイージーフック等々、使う人の動きを想定した細やかで優しいデザインで、毎日の洗濯仕事を少しでも快適に行えるように工夫されている点が高く評価された。
また、「(一社)日本流行色協会 奨励賞」には、(株)小森樹脂の「レスボックス500」が選ばれた。本製品は、蓋が食材をふわっと盛ることができるドーム型、レバーレスで壊れにくく開け閉めが簡単にできる構造、また弁当の具材やごはんの色を引き立て邪魔しない淡い3色(グレージュ、パープル、グリーン)の繊細なカラーリング展開が用意され、穏やかで心地よいお弁当時間を演出するものとなっていると評価された。
「全日本プラスチック製品工業連合会 奨励賞」には、東和産業(株)の「WPフレーム付衣類収納ベーシックM・L・ロング、WPフレーム付衣類収納スタイルM・L・ロング」が選ばれた。本製品は、収納袋とフレーム構成を組み合わせたもので、軽量で積み重ね使用も可能、不使用時には折り畳んでコンパクトに保管できるものであり、また前面と天面が一度に開き収納物が一見しやすく、入れ替えも容易な構造となっている実用性、利便性が評価された。
そのほか、「日本プラスチック日用品工業組合 優秀賞」として、国際化工(株)の「M153ウォーターピッチャー」、(株)カワキタの抱っこバッグ「N/ORN Máni(ノルン マーニ)」の2点が選ばれた。
前者のウォーターピッチャーは、再生可能な資源作物パルプ20%を含んだ環境に優しいバイオマスメラミンを使用するとともに、つや消しの質感、落ち着いた色彩とシンプルな造形の質の高いデザインが評価された。
後者の抱っこバッグは、2本のショルダーと背中のクロス構造で肩の負担を軽減でき、いつでもどこでも簡単に赤ちゃんを抱っこしたり、降ろしたりできる「安全性」「機能性」「デザイン性」が融合した製品である点が評価された。
以上、特別大賞として経済産業大臣賞1点、大賞として経済産業省製造産業局長賞1点、及び協賛団体の理事長賞又は会長賞が各1点ずつ計4点、協賛団体の奨励賞が各1点ずつ計4点、並びに日本プラスチック日用品工業組合優秀賞2点の、総計12点の優秀製品が選定された。
これらの選定、受賞製品を含めたすべての出品製品は、当コンクールが標榜する「社会に優れた品質や、安心・安全の提供」を実現するべく、組合員企業が努力を重ねその成果を具現化してきた製品たちである。
最後に、繰り返しになるが、厳しい経済、産業状況は冒頭述べたとおりであり、プラスチック日用品業界においても、原材料費の高騰、人件費、物流費、電気等のエネルギーコストの大幅な値上がりにより製造コストが上昇するとともに、諸物価高騰から消費財の買い控えなども進む一方、環境への配慮等の社会課題への対応など山積みで、ますます状況は厳しくなっている。
しかし、そうした課題の解決に向けては、やはり、素材・加工技術・物流などさまざまな点で継続可能な戦略を練りつつ、モノづくりの基本に立ち返って、ユーザーの声を真摯に聞きながら、よりよい製品の開発・販売を地道に実践していくことが必要である。
本コンクールが、組合員企業の切磋琢磨した成果を発表、発信する場としての役割を今後も果たしていければと思う。













