総評
審査委員長 一般財団法人 日本特許情報機構
デザイン部長 本多 誠一
10月2日、第43回「プラスチック日用品優秀製品コンクール」審査会が開催された。
今年はここ数年の厳しいコロナ禍から解放され穏やかな日々が送れるはずだったが、年初早々に大地震が能登半島を襲った。そして9月には一向に復旧が進まない被災地、避難先を大雨、洪水が追い打ちをかけ、半島は更なる大きなダメージを被った。
大地震、大雨で被災をされた能登の皆様に心よりお見舞いを申し上げるとともに、今後皆でさまざまな支援を続けていかなければならないと思うところである。
一方こうした大自然からの厳しい試練に加えて、終りの見えないウクライナ侵攻、パレスチナの対立等国際紛争は引き続き、世界の政治・経済はきわめて厳しい状況にある。我が国において行き過ぎた円安により産業・経済の厳しさが増し、中小企業や一般庶民の生活をも追い込んでいる。
しかし、こうした状況にもかかわらず、本コンクールに今年も20社、59点、昨年とほぼ同様の応募があった。今回のコンクールにおいても、以下紹介する各賞受賞製品をはじめ出品製品の多くが生活を豊かにし、暮らしを楽しくさせる創意工夫にあふれるだけでなく、環境への配慮、SDGsへの対応などに積極的に取り組んでいる製品が数多く見受けられた。
今回、特別大賞の「経済産業大臣賞」には、国際化工(株)の「ツートーンシリーズ スマートクリーム(シリーズ名)の①プレートE311・E312、②飯碗A150,A151,A152 ③ボールG135,G136」が選定された。本製品は、工場から出る不良品や成形時の端材、回収した使用済み食器を再利用した素材、スマートメラミン樹脂(再利用率25%)を採用して環境への配慮をしながらも、業務用食器としてはきわめて上品な淡い色調のツートーンカラー、表面に不均一な凹凸を施しマットな質感にすることで表情豊かな器に仕上げた点等が高く評価され選ばれたものである。
そして、大賞の「経済産業省製造産業局長賞」には 、岩崎工業(株)の「タテヨコ・シームレスピッチャー1.2 K-1273」が選定された。本製品は、従来にないフタとパッキンが一体化しスライドロックを下げながら押せばスムーズに開閉できる完全密閉の構造が特長の、冷蔵庫内に横置きできる隅丸角柱状の造形の冷水筒であり、冷蔵庫内の空間を効率的に利用できる機能的かつ便利な製品である点が高い評価を得たものである。
そのほか協賛団体の理事長賞又は会長賞として、「(一財)生活用品振興センター 理事長賞」には、岩崎工業(株)の「まな板にもなる小分け冷凍パック 薄切り肉用A-060、同 厚切り肉用A-061」が、そのまま電子レンジで半解凍し、容器を展開すればまな板として使用でき、熱湯消毒で清潔に繰り返し使用ができる、コロナ禍以降のまとめ買い冷凍保存の食生活スタイルにもマッチしたコンパクトに収納・保管できる使い勝手の良い実用性、利便性に優れた製品として高く評価され選定された。
「(一財)日本ファッション協会 理事長賞」には、国際化工(株)の「M715 ダストボックス 大」がリサイクル素材、スマートメラミン樹脂(60%再利用)を使い環境への十分な配慮をしつつ、アウターカバーの内側の中子中央にスリットを設けることによりゴミ袋を2枚セットして分別できる工夫や、艶消しの穏やかな色調と優しく美しい造形にまとめ上げた点が高く評価され選定された。
また、「(一社)日本流行色協会 理事長賞」には、岩崎工業(株)の「ホールドカンラウンド7L L-1041」が選定された。本製品は、部屋には欠かせないゴミ箱の存在を空間に上手く調和させるように、適度な色の強さを持たせながらも程よい色調に工夫されている点がすばらしく、シンプルな造形と相まって高く評価されたものである。
そして、「全日本プラスチック製品工業連合会 会長賞」には、国際化工(株)の「MA138カッティングボード」が選定された。本製品は、四隅をわずかに厚くして裏面全体が接地しない形態として衛生的に使用することができ、芯部には板(いた)材を用いて軽量ながらも適度な安定感を持たせるとともに、両面異なるカラフルなイラストで裏表使い分けが便利なキッチンが楽しくなるまな板とした点が高い評価を得て選定された。
次に、奨励賞として、「(一財)生活用品振興センター 奨励賞」には、新輝合成(株)の「ユニード浴用品 マグネットシリーズ ①ユニード マグネット付きバスチェア/MB23、MB33 ②ユニード マグネット付きコーナーラックフック付き ③ユニード マグネット付きボトルラック/フック付き ワイドフック付き」が選定された。本製品は、マグネットで浴室壁面に接着させ、バス用品等を浮かせてスッキリ収納することができるもので、さびにくいラバーマグネット、抗菌加工、汚れが発生しにくい形状等実用性に優れた便利な製品にまとめ上げている点が評価され選定された。
「(一財)日本ファッション協会 奨励賞」には、スケーター(株)の「行楽ランチケースシリーズPL32B 行楽ランチケースS 320ml、PL70B 行楽ランチシリーズM 700ml」が選定された。本製品は、清々しいペールトーンの淡いグリーンとパープルの2色のきわめてシンプルな色彩と造形から成るもので、フタはしっとりと開けられ、スッと吸い付くように閉まり、スタッキング収納も可能な設計が高く評価された。
また、「(一社)日本流行色協会 奨励賞」には、天馬(株)の「推しぐらしフィッツケースワイド」が選ばれた。本製品は、その名のとおり、推し活市場向けの積極的なカラー展開を実現した製品である。応援も自室インテリアも「オシ・カラー」で埋め尽くす「オシ」コミュニティ特有のルール等の分析に基づく多彩で繊細なカラーリング展開、食べ物のひらがな表記によるネーミングなどその商品企画力が高く評価された。
「全日本プラスチック製品工業連合会 奨励賞」には、天馬(株)の「フィッツ ペグキャビネット メッシュ、フィッツ ペグキャビネット ワイド」が選ばれた。
本製品は、プラスチック製であることから、軽量で積み重ね使用も可能であり、レイアウト変更が容易にできる。また、好みの色(4色)でコーディネートも可能であるとともに、側面のペグボードで小物を見せる収納もできるなど、インテリアとしてのプラスチック製品の新たな可能性を感じさせる商品であると評価され、選定された。
そのほか、日本プラスチック日用品工業組合優秀賞として、新輝合成(株)の「まるいエラストマーまな板 広く使えるワイド 食卓で使えるミニ」、(株)アイセン「BX836 貼りつく鏡磨き おしりねこ」の2点が選ばれた。
前者のまな板は、大小2枚の略「D」字状に成形された抗菌加工のエラストマー素材で傷がつきにくく、その表裏には異なるシボ加工が施されて使い分けができる使い勝手のよさ、ミニはそのまま食卓で器代わりに使用できるデザイン性が評価された。
後者の鏡磨きは、鏡やタイル等のツルツル面にペタッと張り付けられ、いつでもサッと水をつけるだけで使える便利で実用的、しかも、おしりを向けながら振り返る黒猫の絵柄が愛らしい楽しい道具である点が評価された。
以上、特別大賞として経済産業大臣賞1点、大賞として経済産業省製造産業局長賞1点、及び協賛団体の理事長賞又は会長賞が各1点ずつ計4点、協賛団体の奨励賞が各1点ずつ計4点、並びに日本プラスチック日用品工業組合優秀賞2点の、総計12点の優秀製品が選定された。
これらの選定、受賞製品を含めたコンクール申請のすべての製品は、昨年創設から50年を迎え改めて初心に立ち返り、「社会に優れた品質や、安心・安全の提供」を実現するべく組合員企業同士が切磋琢磨し、具現化した製品たちである。
プラスチック日用品業界においても、原材料費の高騰、電気・ガソリン等のエネルギーコストの大幅な値上がりにより製造コストが上昇するとともに、諸物価高騰から家庭での消費財の買い控えなどで売り上げが減少して、ますます状況は厳しくなってきているが、今後も資源や環境などの社会課題の解決に向け、素材、加工技術、物流などさまざまな点で継続可能な戦略を練りつつ、よりよい製品の開発・販売を地道に実践していかなければならない。
組合設立51年目のスタートに、本コンクールがまたさまざまに考えをめぐらす良い機会となれれば幸いである。