第42回プラスチック日用品優秀製品コンクール

総評

　第４２回「プラスチック日用品優秀製品コンクール」が今年も無事に開催された。
本年5月感染症法５類に引き下げられた新型コロナウイルスと、2年ぶりのインフルエンザの二つの感染が全国に拡大するとともに、未だ終りの見えないロシアのウクライナ侵攻による産業・経済への影響や下がり続ける円安による厳しい経済状況にもかかわらず、今年も２３社、５８点、昨年とほぼ同様の応募があった。
日用品プラスチック業界においても、原材料費の高騰、電気・ガソリン等のエネルギーコストの大幅な値上がりにより製造コストが上昇するとともに、物価高騰、電水光熱費激増から一般家庭での消費財の買い控えなどで売り上げが減少しており、きわめて厳しい状況にあるが、今回のコンクールにおいても、以下紹介する各賞受賞製品をはじめ出品製品の多くが例年に劣らず、生活を豊かに充実させ、暮らしを楽しくさせる創意工夫に溢れるだけでなく、環境への配慮、SDGsへの対応などに一層積極的に取り組んだ製品が多数見受けられた。

　今回、特別大賞の「経済産業大臣賞」には、（株）台和の「Ｓｈａ美」（ボウル、マグ、タンブラー）が選定された。本製品はプラスチック素材と400年以上の歴史を有する会津塗とのコラボレーションによるハイブリットな便利な素材と伝統技術が融合したものである。木地にはリサイクルＰＥＴ樹脂を使用して環境へ配慮をするとともに、シンプルでスタンダードな造形の一方、５色の豊富なカラーバリエーションは鮮やかさにほんの少し落ち着きを与えた絶妙な色合いかつ光沢を抑えたマットな仕上げによって上品さを醸し出している点が高い評価を得たものである。
　そして、大賞の「経済産業省製造産業局長賞」には 、ヤマト化工（株）の「シェルミン」（シリーズ名）のオーバルプレート（SM―１１０４SW）が選定された。本製品は、環境負荷の低い未焼成卵殻を再利用した、次世代バイオマス素材を使用することで、石油由来成分を減少させるとともに、製造時のCO2排出量も削減している。様々な形状を生み出せる従来とおりの金型を使用可能であり、優美な楕円曲線の造形と陶器に近い質感を併せ持つともに、食洗器や電子レンジの使用も可能な、環境への配慮と優れた機能性・利便性を共に兼ね備えた点が高く評価され選ばれた。
　そのほか各協賛団体の大賞として、「(一財)生活用品振興センター　理事長賞」には、天馬（株）の「フォールディングテーブル（グレー／ベージュ／スモーキーホワイト））」が、コンパクトに収納・運搬できる使い勝手の良い実用性、利便性に優れた製品として、「(一財)日本ファッション協会　理事長賞」には、（株）台和の「スタックカップホルダー」が、使い捨てカップをはめ込むだけでジョッキに早変わりし、スタッキング機能で複数しっかり持てる構造で、繰り返し洗いで何度も使えるエコで便利な製品であるとして評価され、選定された。
　また、「（一社）日本流行色協会　理事長賞」には、（株）オーエスケーの「ansio oval lunch box」が選定された。弁当箱としてはオーソドックスな楕円形を本体容器と僅かに膨らむ蓋がスッキリと稜線で合わさるようにシンプルかつ柔らかに形づくって、淡い感触の彩色で一体感を整え、その中央を同系色の帯（ゴム）でほどよく引き締める美しい姿に仕上げるとともに、透明な中仕切りの配慮や洗いやすい隅丸内底の実用設計と合せて高く評価された。
そして、「全日本プラスチック製品工業連合会　会長賞」には、エビス（株）の「パックスタッフ フィットロック シリーズ」が選定された。フラップと持ち手をつまむだけで片手で簡単に開く‘てこ’の原理を使った操作性に優れた開閉構造や本体・蓋の縁に溝がない洗いやすく水切れが良い設計、また冷凍・加熱ができる素材としっかりとした成形技術が評価を得て選定された。

　次に、奨励賞として、「(一財)生活用品振興センター　奨励賞」には、オカ（株）の「ケアミュール　M・Lサイズ」が、風呂場等水回りでの介助作業においてストレッチャーのストパーの上げ下げを足で行う際にも足を怪我しないよう足先まで肉厚にするとともに、濡れた地面を捉える特殊構造のソール、また底面・側面の水はけ用穴を設けつつ程よい硬さにした実用性、利便性が評価された。
　「(一財)日本ファッション協会　奨励賞」には、八幡化成（株）の「ガーデンビートル（フォンタナジョウロ）１．５L ／５L」が選定された。外周を彩る縦縞波々形状に太幅U字状ハンドルとＬ字状グリップを備えた堅固でありながら愛らしい本体容体に、外周同様の波形状の条溝を散水構造に利用したユニークな造形が高く評価された。
　また、「（一社）日本流行色協会　奨励賞」には、（株）吉川国工業所の「①オーシャンリサイクルプラスチック　タウンバスケット　ミニ　②オーシャンリサイクルプラスチック　タウンバスケット」が選ばれた。本製品は原材料にバイオマスプラスチックを100%使用し、海洋ゴミの再生素材５％配合した環境に配慮したものであるとともに、その外観においても海洋ゴミ再生素材の青がランダムに点在する形をそのまま表すことで改めて環境問題の危機的実情について警鐘を鳴らす役割を果たし得るのではないかと評価された。
　「全日本プラスチック製品工業連合会　奨励賞」には、（株）オーエスケーの「ansio　shaker　bottle」が、汚れがつきにくい素材、パーツが分解できる造りで、隅々まできれいに洗うことができる衛生的、実用的な製品であるだけでなく、上部の円形開口から下方に向け徐々に角丸三角形状に滑らかに変形する握りやすい筒形状の造形に穏やかな色調を施した仕上がりの素晴らしい製品であると評価され、選定された。

　そのほか、日本プラスチック日用品工業組合　優秀賞として、リス（株）の「ＨＯＭＥ＆ＨＯＭＥ　通路で使えるペダルダストボックス　４５Ｌ」、オカ（株）「ベジマジ　そだてる」（栽培容器）の２点が選ばれた。
　前者のダストボックスは、『薄くコンパクトな設計で導線の邪魔にならない』をコンセプトに、ペダル式開閉のワイドな開口部、かつ開蓋状態を維持できる機構により、ゴミの取り出しやゴミ袋の取り付けがしやすいなど、キッチン環境をスッキリと整えられるようキメ細かな配慮がされている点が評価された。
　後者の栽培容器は、スプラウトを簡単に育てられるように水換えがしやすい「給水口」を設け、また「水位線」を分かり易く表して実用性を備えているだけでなく、成長を観察する楽しい道具であり室内のお洒落なインテリアにもなり得る製品として評価された。

　以上、特別大賞として経済産業大臣賞１点、大賞として経済産業省製造産業局長賞１点、及び協賛団体の理事長賞又は会長賞が各１点ずつ計４点、協賛団体の奨励賞が各１点ずつ計４点、並びに優秀賞２点の、総計１２点の優秀製品が選定された。

　2023年、日本プラスチック日用品工業組合は1973年の設立から50年を迎えた。
　本年6月に行われた創立50周年記念式典の岩崎理事長のご挨拶で語られたように、創設時の時代状況：オイルショック前後の厳しい産業経済状況を振り返りつつ、その後に始まった本「プラスチック日用品優秀賞製品コンクール」の目的と意義を改めて確認する良い機会となった。
　1835年頃に塩化ビニルが発見されたのが最初と言われる「プラスチック（合成樹脂）」はその後素材として著しい進化を遂げ、プラスチック無しでは、現代の人々の生活は想像できないほどあらゆるところに浸透していった。他素材に比して軽量で、加工がしやすく量産性があることから安価である等の特徴、優位性もあって、家庭用品ではガラスやアルミ、ステンレス、鉄などの代替品として使われ、多くの日用品でプラスチックが主流へと移り変わってきた。そうした時代の中で日本プラスチック日用品工業組合は社会ニーズに支えられながら大きな実績を積み重ねてきた。
　しかし、一方でプラスチックはこれまでその主な原材料を化石燃料とすることや自然界で分解しないことなどから、近年資源や環境の大きな社会問題として懸念が示され、様々な対応が求められるようになってきた。
　今年で42回目を迎えたプラスチック日用品優秀賞製品コンクールにおいては、上記の選考結果のとおり、それらの社会的な要請に応える努力をするものばかりであるが、創設から50年を経て改めて初心に立ち返ることが重要と考えたところである。
　表向きに格好よく大上段にスローガンを構えるのは容易いところであるが、身近な本音の目標として「業界の地位向上や組合員同士の切磋琢磨」を目的に開催するものでよく、ただし結果としては、その意義、本コンクールが行われるにふさわしい積極的な価値、目指すところが、本コンクールの活動を通じて、組合員が提供するプラスチック日用品について「社会に優れた品質や、安心・安全の提供」を実現することにつながることだろう。

　今後、資源や環境などの社会課題の解決に向けては「素材」「加工」「設備」「物流」「法規制」などの多面的な観点でサステナブルな成長戦略を策定し、多くの関係者が様々なことを地道に実行していかなければならない。その厳しい道のりの中で、本コンクールがその一つの明るいメルクマールのような存在になれるように『継続』していければと思う。

＜メルクマールとは＞
「基準」「めじるし」「指標」を指す。
具体的には、目標地点までの進捗状況を把握するための「目印」を指す言葉。
ビジネスにおいては、事業や業務の活動の目標達成するために設けられる「管理指標」
や「達成基準」として使用される。

受賞製品リスト

　

賞の種類	特別大賞：経済産業大臣賞
受賞会社	株式会社台和
受賞製品	Sha美
受賞理由	・受賞対象製品は、400年以上の歴史を持つ伝統工芸品「会津塗」の技術と、リサイクルＰＥＴ樹脂を使用した素材とを融合させた製品。 ・「会津塗」の魅力である「塗り」の美しさを活かしつつ、和にも洋にも使える、手になじみやすいデザインになっている。また、色調に程よくマットな質感を持たせることで、主張し過ぎることなく食卓に彩りを添える器となっている。 ・樹脂製なので軽くて割れにくく、電子レンジや家庭用食洗機にも対応できるので、多様化するライフスタイルに合わせた様々な使い方を考える楽しみを与えてくれる製品である。

　

賞の種類	大賞：経済産業省製造産業局長賞
受賞会社	ヤマト化工株式会社
受賞製品	シリーズ名：「シェルミン」　オーバルプレート（品番：SM-1104SW）
受賞理由	・受賞対象製品は、未焼成の卵殻膜に、パルプ、メラミン樹脂を混合したバイオマス素材を使用した環境に配慮した製品であり、SDGsの理念にも合致している。 ・陶器に近い重量感、素材のぬくもりを感じられる質感を持ち、既存の金型で成形可能であることから、多彩な形状やカラーバリエーションによるアイテムの提供が可能となっている。 ・当該製品は、バイオマスマーク認定商品である一方で、従来のメラミン製食器と同様に電子レンジや食器洗い機での使用が可能となっており、業務用食器として、ＳＤＧｓの取組に積極的な企業等での利用が期待される。

　

賞の種類	理事長賞：一般財団法人生活用品振興センター
受賞会社	天馬株式会社
受賞製品	フォールディングテーブル　グレー/ベージュ/スモーキーホワイト
受賞理由	実用性、耐久性、利便性等の観点から審査しました。 フォールディングテーブル　グレー/ベージュ/スモーキーホワイトは、実用性利便性に優れた製品であると認識いたしました。 コンパクトに収納・運搬できる使い勝手の良い製品であると評価いたしました。 流行りのアウトドアレジャーで便利で重宝されるものと思います。 以上のことから当センター理事長賞にふさわしい製品であると選定いたしました。

　

賞の種類	理事長賞：一般財団法人日本ファッション協会
受賞会社	株式会社台和
受賞製品	スタックカップホルダー
受賞理由	コロナ禍がおさまり、スポーツ観戦やフェスなど、各所でイベントの盛り上がりが戻ってきている。同時に、消費者からの発信で、いつもの生活、いつもの行動の中で、いつも使っているアイテムに機能性を持たせる工夫を投稿するということがSNSで注目を集めている。このような背景に、「これは便利！」とうなずけたこのスタックカップホルダー。 スポーツ観戦やお祭りなどで飲むビールはおいしい！でも、持ちづらくこぼしやすいカップはどうにかならないものかと、みんなが悩んでいたはずだ。 取り付けるだけでジョッキに早変わりするこのアイデアと、片手でカップが複数重ねて持てる五角形の取っ手、カップをしっかり固定する3点リブなど、緻密に計算された形状は、より消費者に寄り添った視点である。時代にあった潤いと活力に満ちている製品として、選定しました。

　

賞の種類	理事長賞：一般社団法人日本流行色協会
受賞会社	株式会社オーエスケー
受賞製品	ansio oval lunch box
受賞理由	楕円形（オーバル）は、角が丸いことから優しい、親しみやすい印象を与える。さらにフタがドーム型で、全体にコロントしたかわいらしさがあり、手のひらで温めたくなるような感情を誘う。見た目で「触感」の気持ちよさを伝えるカラーが採用されていて、全体形状と素材の質感、色がぴったりと合っている。機能では角に汚れが残らないことから、洗いやすいと言う点も、ありがたい。食材の色を生かすための透明な仕切りはこれまでの弁当箱にはありそうでなかった配慮だと思う。フタと本体を止めるゴムの色は、４色の弁当箱それぞれに調和し、適度なコントラストをつくる色が設定されており、細部にいたるまで手を抜かないカラーコーディネートがすばらしい。

　

賞の種類	会長賞：全日本プラスチック製品工業連合会
受賞会社	エビス株式会社
受賞製品	パックスタッフ　フィットロック　シリーズ
受賞理由	開閉がしやすく操作性が優れている。素材も冷凍、加熱(レンジ使用可)ができるものとなっており、食洗機も利用できるので、便利。 成形技術もしっかりしており、色もカラフルで、透明性が高いので、顧客のニーズにマッチするものと思われる。

　

賞の種類	奨励賞：一般財団法人生活用品振興センター
受賞会社	オカ株式会社
受賞製品	ケアミュール　M・L サイズ
受賞理由	実用性、安全性、利便性等の観点から審査しました。 ケアミュール　M・L サイズは実用性、利便性、時期を得た優れた製品であると 認識いたしました。 介護や福祉の現場では入浴介助などは大変な作業であると認識しており、その中で少しでも作業効率や安全性等に考慮する必要があります。 本製品は安全性に考慮した実用性、利便性が備わったものと評価いたしました。 ただし、もう少し工夫がほしいと思われる点があり(例えば抗菌素材を用いる)、更なる改良等に期待を込めて奨励賞といたしました。

　

賞の種類	奨励賞：一般財団法人日本ファッション協会
受賞会社	八幡化成株式会社
受賞製品	ガーデンビートル（フォンタナジョウロ）1.5L ガーデンビートル（フォンタナジョウロ）5L
受賞理由	昨今の皆様の企業努力により、環境への配慮として、「お気に入りを長く使いたい」という思想は、年齢層に関係なく消費者に定着してきた。 波うつ形状の側面に、触り心地の良い上質な質感、そしてなんとも愛らしいジョーロの形は、きれいなお花やみずみずしい緑の隣に並べても違和感がない。統一感のあるデザインは、買い替えを誘発させないという意味でも納得ができる。 さらに、注ぎ口が側面の波うつ形状と同様で、水の流れが噴水ショーのようにドラマティックに散水できる。これは、特許出願中でもある世界初のマルチスプリンクラー構造だという。 毎日の水やりに心地よさと楽しさをプラスした新発想のジョウロは、消費者に潤いと活力に満ちた生活を提供できるものとして選定しました。

　

賞の種類	奨励賞：一般社団法人日本流行色協会
受賞会社	株式会社吉川国工業所
受賞製品	①　オーシャンリサイクルプラスチック　タウンバスケット　ミニ ②　オーシャンリサイクルプラスチック　タウンバスケット
受賞理由	この青は「海洋ゴミ」の海のイメージと「再生」をストレートに消費者に伝えることができる。バイオマスプラスチックであること、海洋ゴミの再生素材を用いていることを販売時には前面に出して訴求して欲しい。ＳＤＧｓを勉強している若者たちの心に響くはずだ。海洋ゴミから再生した素材の青がランダムに点在する。白地に点在したブルーが作る柄は、おそらく唯一無二になる。日本市場ではこれまで、均一でムラのない色表現がよしとされてきた。高品質でまったく同じものを大量につくる技術も優れていた。その技術は誇れるものであり、今後も重要な技術であることに違いないが、今は、リサイクル、アップサイクルが必須となり、長期に使用できることが推奨される時代である。違う材料を混ぜた時に偶然できる色ムラやマーブル調など、使い込むうちに味わいが増すプラスチック素材など、今後の開発に期待される。

　

賞の種類	奨励賞：全日本プラスチック製品工業連合会
受賞会社	株式会社オーエスケー
受賞製品	ansio shaker bottle
受賞理由	パーツが分解でき、きれいに洗うことができる。 汚れもつきにくい素材を利用しており、清潔感を保つことができる。 色調も穏やかでリビング等で使用しても持ち歩いても生活にマッチするものと思われる。

　

賞の種類	優秀賞：日本プラスチック日用品工業組合
受賞会社	リス株式会社
受賞製品	HOME＆HOME　通路で使えるペダルダストボックス　45L
受賞理由	このゴミ箱は、『薄くコンパクトな設計で導線の邪魔にならない』という事をベースに設計がされているので、キッチン環境をスッキリと整えることができます。 奥行２２．５ｃｍという薄型設計なので、キッチンサイドや壁際に設置した時に通路を邪魔しない薄さとなっているのは設置がしやすいです。 手を使わずにワイド開口部を開閉できるペダル式が採用され、ゴミ捨てもしやすい薄型設計となっています。 なお、フタは空いた状態を維持することができるため、ゴミの取り出しやゴミ袋の取付がしやすくなっているなど、キッチン環境をスッキリと整えられるようキメ細かな配慮がされている製品となっています。

　

賞の種類	優秀賞：日本プラスチック日用品工業組合
受賞会社	オカ株式会社
受賞製品	ベジマジ　そだてる
受賞理由	見た目は単なる『栽培容器』ですが、健康野菜のスプラウトを室内で簡単に育てられ、オシャレなグリーンインテリアに変身させるためのスプラウトポットです。 初めて方でも簡単に栽培ができるように、「水位線」をわかりやすくしたり、水替えがしやすいように「給水口」が設けられているなど、チョットした親切設計がされています。 また、栽培容器としてだけではなく、おしゃれなグリーンインテリアとして成長するスプラウト楽しみながら、自分で栽培した新鮮な野菜を手軽に食べることができます。  また、「豆苗」などの再生栽培にも利用できるサイズでもあります。